一枚目の写真は グランド オダリスクです。背中の腰椎の辺りが異常に長く不自然なことで知られています。いわゆるデフォルメされています。でも、全体の構成上では、この方が「美」となっています。

 二枚目の写真は、「岩に繋がれたアンジェリカ」です。この絵は、「泉」とともに若き日に見ました。当時はこちらの絵に衝撃を受けました。なんと妖艶な形の美であることか。若い女性が裸で岩に鎖で繋がれているのです。この絵をダンスパーティーのチケットに使ったこともありましたね。女子学生から趣味が悪いと言われましたが。

 三枚目は「泉」ですが、これも若いころ「美しい」と心奪われました。ただその頃は、まだこの絵の奥深き美に気づきませんでした。この絵の少女の足を見ると筋肉の動き躍動を見て取れます。壺をしっかりと抱えて立っているが故に、足だけでなく頭上に伸びた手にまで、否、全身に筋肉の動きが見て取れます。

 うら若きあどけない表情の乙女の目は、うつろのようですが、何か誘っているようです。近年の美術史研究家は、これを究極のエロチシズムと評しています。この絵に描かれたものは、「清純な乙女の中に潜められた欲望」であると。

 そういえば、ルネッサンス期以来、女性の古典的裸体画(形の美)は、たくさん描かれましたが、艶やかな肉欲まで感じさせるものはありませんでした。それもひっそりと。

 21世紀のピカソと言われたバルチュス(Balthus)も思春期の少女をたくさん書いております。彼が描いたものも少女の中に潜む欲望でした。それも、古典的手法でなく、印象派や前衛絵画を飛び越えた彼独自の手法によってです。アングルから150年後に。

 Dominique Ingresが革命家と言われるゆえんは、もうお分かりでしょう。彼が活躍した時代は、ナポレオン革命の余波が続く混乱期でした。様々な画風が百家争鳴するなか、芸術に革新を求めたどり着いた新たな表現だったのです。(完)
[PR]
by araeshuzo | 2015-05-17 07:05